Ⅰ.全体概要
現在、「成瀬ダム原石山採取工事(第1期)」(国土交通省東北地方整備局発注)では、平成30年度官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の一環として、「対象技術Ⅱ:データを活用して品質管理の高度化等を図る技術」を大成建設株式会社と弊社でコンソーシアムを組み、試行しています。
当試行では、「図1 試行業務の全体図」に示す3つの技術、すなわち、「①材料品質迅速判定技術」「②計測データ共有管理技術」「③遠隔地立会技術」を試行しています。
Ⅱ.各技術の概略
2-1.材料品質迅速判定技術
材料品質迅速判定技術とは、岩級・岩石材質の判定を自動化・高速化・省力化する技術です。岩級・岩石材質の判定は、原石山掘削および骨材製造の過程において、以下に挙げる3つの原位置試験を基に行います。
1)削孔エネルギーの測定(爆砕管理システム)
2)白斑量の測定(白斑画像解析システム)
3)表面乾燥密度・含水量の測定(急速減圧法)
測定技術の詳細については、「Ⅲ.材料品質迅速判定技術の詳細」で後述します。
2-2.計測データ共有管理技術
計測データ共有管理技術とは、3次元モデルへのデータ収集・共有化・ID管理した者へのオープンデータ化する技術です。本技術の主な特長は、以下に挙げる3つです。
1)現場で計測される品質管理データや出来形管理データを定期的にサーバへ自動収集します。
2)1つの3次元モデル(ボクセルモデル)へデータを自動登録します。
3)ID管理した者へデータをオープンし、検索と収集が可能です。
詳細については、「Ⅳ.計測データ共有管理技術の詳細」で後述します。
2-3.遠隔地立会技術
遠隔地立会技術とは、ウェアラブルカメラを活用して立会を行い、可視化・時間短縮化する技術です。本技術の主な特長は、以下に挙げる4つです。
1)遠隔地から施工状況をリアルタイムに動画で確認することができます。
2)遠隔地および複数のウェアラブルカメラ装着者がネットワーク会議下に入ることができます。
3)遠隔地から手書きテキスト・画像ファイルを送信することができます。
4)ウェアラブルカメラ装着者から音声および動画・静止画を送信することができます。
詳細については、「Ⅴ.遠隔地立会技術の詳細」で後述します。
Ⅲ.材料品質迅速判定技術の詳細
3-1.削孔エネルギーの測定(爆砕管理システム)
爆砕管理システムとは、削孔作業中の打撃圧と削孔速度から単位体積あたりの岩盤削孔に要するエネルギーをリアルタイムに求め、削孔エネルギーと岩級の相関関係を基に、岩級判定を行うシステムです。当測定技術の効果を表3-1に示します。
表3-1 測定技術の効果比較表 | ||
項目 | 従来技術 | 本技術 |
測定方法 | 目視 | 油圧力計(クローラドリル搭載) |
測定時期 | 発破後 | 発破前 |
測定ピッチ | △ 5~15m |
○ 3~5m |
測定時間 | △ 10分 |
○ 1分 |
評価のばらつき | △ 測定者により、ばらつく可能性あり |
○ 一定 |
留意点 | 地山内部の岩質分布状況を 考慮できない |
事前に行う削孔エネルギーと岩盤等級の 相関性評価に左右される |
3-2.白斑量の測定(白斑画像解析システム)
白斑画像解析システムとは、岩盤を撮影した画像を自動解析し、白斑の径・個数を算出して材料判定を行うシステムです。当測定技術の効果を表3-2に示します。
表3-2 測定技術の効果比較表 | ||
項目 | 従来技術 | 本技術 |
測定方法 | 目視・ハンマー確認 | デジタル画像の自動解析 |
測定時間(1m2) | △ 10分 |
○ 3分 |
評価のばらつき | △ 測定者により、ばらつく可能性あり |
○ 一定 |
3-3.表面乾燥密度・含水量の測定(急速減圧法)
急速減圧法とは、真空法と電子レンジ法を組み合せて試験を行い、表面乾燥密度および含水量を迅速に求める手法です。当測定技術の効果を表3-3に示します。
表3-3 測定技術の効果比較表 | ||
項目 | 従来技術 | 本技術 |
測定方法 | JIS A 1110 粗骨材の密度及び吸水率試験方法 |
真空法・電子レンジ法 |
測定時間(1試料) | △ 48時間 |
○ 0.5時間 |
密度と吸水率との相関 | ◎ 非常に高い |
○ かなり高い |
留意点 | 測定結果を得られるまでに 時間を要する |
予備試験で相関性を確認する 必要がある |
Ⅳ.計測データ共有管理技術の詳細
4-1.技術内容
計測データ共有管理技術では、現場端末(重機搭載PC・タブレット・計測機器)とアプリケーションサーバとの間をインターネットで結び、定期的に計測データを「品質管理データ統合システム」(弊社ソフトウェア)へアップロードします。
アップロードされたデータには、ID管理された者だけがアクセスでき、データの確認や書類の作成等を行うことができます。機器と計測データの関係を図4に示します。
4-2.導入効果
計測データ共有管理技術の導入により、以下に挙げる効果が期待できます。
・計測データ(品質・出来形)を1つの3次元モデルで一元管理が可能
→ データの共有化、データの拡散・紛失の防止
・計測データを自動的に登録可能
→ データ入力作業の省力化、データ入力ミスの防止
・計測データの絞込み検索により電子成果物(提出書類・統計書類)の作成が可能
→ データ転記ミスの防止
Ⅴ.遠隔地立会技術の詳細
5-1.技術内容
遠隔地立会技術では、現場端末(スマートグラス・タブレット)と遠隔地端末(閲覧用ワークステーション)との間をインターネットで結び、リアルタイムに相互の音声・画像を確認しながら立会を進めることができます。端末と音声・画像の関係を図5に示します。
・書類の確認が必要な場合
遠隔地端末から手書きテキスト・画像ファイルを送信すると、現場端末に表示されます。スマートグラスでは、視点を遠近移動させることで、図面の大きさを変化させることができます。
・記録画像の保存が必要な場合
現場端末のGNSS座標を付与した画像を撮影し、弊社アプリケーションサーバ上にある「品質管理データ統合システム(SS-QIS)」に送信します。SS-QISは3次元モデルのボクセルで管理されており、画像に付与されたGNSS座標を含むボクセルに紐づいて記録画像が保存されます。
5-2.導入効果
遠隔地立会技術の導入により、以下に挙げる効果が期待できます。
・音声と画像ファイルによる立会書類の軽減
・音声と画像ファイルによる意思疎通の深化と手戻り作業の低減
・移動時間の短縮